泣いているうちに凛花は智樹の腕の中で眠ってしまった。

「あれ、凛花?
眠ってしまったのか。
眠るのも限界だったってことなんだな。」


「ママ・・・。」


「しゃあない、ベッドまで連れて行ってやるか。」


智樹が凛花をベッドにおろした途端、


「いや、やめて誤解よ。違うの、違うのよ。お願い信じて・・・セルジュ・・・。」


凛花が夢におびえているのがわかった。


「セルジュ?誰なんだ・・・震えてるじゃないか。
とりあえず、瑞歩にメールを送っておくか。

しかし、まいったな。
インテリぶったナマイキなお嬢様かと思ったけど、素直でかわいいとこもあるんだな。

妹っていたらかわいいもんだな。」



智樹がセルジュという名前のことを瑞歩にメールで送ると返事がすぐに送られてきた。


「セルジュは凛花のボディガードだった男で、両親の葬儀のときに凛花の前から消えた人物。だと!
瑞歩も追ってる男なのか・・・。

だけど、中学生の女の子にボディガードって、いったい凛花はどういう子どもだったんだ?」



翌朝、目を覚ました凛花があわてて、リビングに降りると、智樹が笑ってお弁当を差し出した。

「おはよう、いいところに起きてきたな。
これ、今日の弁当だ。ほらよ!かばんにいれとけ。」


「あっ、す、すみません・・・私、早く自分で作れるようになりますから。
それと、私昨日、泣き疲れて寝てしまって・・・ほんとに、すみません。ごめんなさい。」


「泣きやんだならもういいって。
まだ、我慢してることはないのか?
おまえは負けず嫌いだから、ほんとは泣きたいことをたくさん我慢してるんじゃないのか?

あったら早い目に言えよ。
まぁ・・・僕が役にたつかどうかはわからないけどな。」



「は、はい。大丈夫です。
智樹さんにご迷惑はかけられません。
高校を出ていいところに就職できるようにがんばりますから。」


「就職希望なのか?
無理するなよ。それに、おまえの成績ならいい大学だって望めるはずだ。
学費の心配して就職を決めなくていいぞ。

奨学金って手もあるし、うちの兄貴からお金を借りる手もある。
就職してから返してもらえばいいだけだからな。」


「でも・・・いえ、とにかく高校を卒業するまでお願いします。」


智樹は凛花は何かまだ重要なことを隠していると思った。

セルジュというボディガードも気にかかるし、大学に行きたがらないというのも気になった。