そろそろ戻らないと、本気で保が心配する。 多分、あれから数時間は経っているはずだ。 莉乃の元に逝きたいと思っても、自分で命を絶つことなんて臆病者の俺には出来なくて。 やるせない気持ちと、絶望感だけが胸を支配していた。 「結城、君……?」 立ち上がってノロノロ歩き出した時、誰かに名前を呼ばれて振り返った。 そこにいたのは、黒っぽい服を着て、長くて綺麗な黒髪を一つに結って、スラッとしている女性。 その人には、どこか見覚えがある。 確か……。