「あの子、あなたのことを大切に想ってたから……これは、あなたに受け取ってほしいと願ってるはずよ」
中々受け取ろうとしない俺に、優しい声が降って来る。
やめて下さい。
優しくされる資格なんてない。
もっと責めて、罵ってほしかった。
気の済むまで思いっきり。
この先もずっと、両親の無念が晴れることはないだろう。
死んでも償いきれないことを、俺はしてしまった。
「莉乃の気持ちを、受け取ってあげて」
「莉乃の大切な日記を、こいつなんかに渡す必要はないだろ!」
怒鳴り声が聞こえて、さらに顔を上げることが出来なくなった。
その通りだ。
俺なんかが、読んでいいはずがない。
「あなたったら……。お願いだから、そんなことを言わないで。あなたも読んだでしょ?莉乃の気持ちを届けてあげなきゃ……っあの子が報われないじゃない」
「……っ」
その言葉に、莉乃の父親は言葉を詰まらせて黙り込んだ。
「だからお願い。あなたに受け取って欲しいの」
そう言われて、震える両手を伸ばしてノートを受け取った。
そこまで言われて、受け取らないなんて無情なことは出来なかった。
「ありがとう」
その声に大きく首を振った。
そして、深く深くお辞儀をして2人の前から立ち去った。
溢れた涙が零れ落ちそうで、もう我慢出来そうになかった。



