「すみません、でした……っ」



この場にいるのが辛くて、立ち去ろうとしたズルい俺。


こんな時に逃げようとするなんて最低だ。


だけど耐えられなかった。



俺には泣く資格なんてない。



気を抜くとどうしようもない悲しみに押し潰されそうで、だけど、両親の前で泣くなんてそんな無神経なことは出来なかった。



「……待って!」



その声にピタリと足が止まる。


だけど、振り返ることが出来ない。


涙はギリギリのところで留まった。



「あなたに会えたら、渡そうと思ってたの。これ……っ」



そう言って俯かせた視線の先に、淡いピンク色のノートが差し出された。



「莉乃の日記なの……あなたに持っててほしいから、受け取ってちょうだい」



俺には受け取る資格なんてない。


俺が莉乃を死なせたも同然なのだから。