なんとか一命を取り留めたカズヤ君。
だけど現実はそう甘くない。
この3日がヤマとなるだろう。
「ご両親は?」
挿管チューブの先を人工呼吸器へ接続しながら看護師さんに訊ねる。
自発呼吸がないから設定は全自動モードに合わせた。
「外でお待ちです。呼びますか?」
「いや、診察室にご案内して頂けますか?」
「わかりました」
いきなり人工呼吸器が繋がった姿を見せられたんじゃ、混乱するに決まっている。
「よく頑張ったな」
そう言って、カズヤ君の小さなおでこをそっと撫でた。
「自発呼吸が出て来たら、すぐに教えて下さい」
そう言って病室を出ると、ご両親が待つ診察室へ急いだ。
命のリミットを両親に告げる瞬間が一番心苦しい。
生きる力を信じたいけど、どうにもならない時もある。
泣き叫ぶ両親の声を聞いていると、何も出来ない自分が悔やまれてならない。
「お疲れ、シロ」
医局に戻ると同期入職の保が声をかけて来た。
晴れて研修医を卒業した俺と保は、久しぶりにこの病院で再会し、4月から医者として勤務している。



