「ほらあそこだよ!もう始まってる」
私の手を離して樹里(じゅり)ちゃんはそこを指差す。
入院した時に腕に巻かれるネームバンドには、患者間違いがないように照合用のバーコードと名前、年齢が載っている。
7歳、か。
だとすると小学一年生か二年生ってことになる。
よっぽど楽しみだったのか、樹里ちゃんは私を置いて一人で行ってしまった。
ゆっくりその後を追う。
目の前には半円になって座る小学生が数人いて、すでに樹里ちゃんもその中に溶け込んでいた。
それにしても……絵本か。
高校生にもなって……。
なんて思いながら
絵本を読むその人を少し離れたところから何気なく見た。
えっ……
「あ!!」
ドキッ
子ども達の前で本の読み聞かせをしていたのは、逢いたいと思っていた彼だった。



