「一つだけ聞いていい?」
目を開けたところでシロー君にそう声をかけられた。
「うん、なに?」
首を傾げながらそっと横顔をうかがう。
「神崎って奴と付き合ってんの?」
え……?
シロー君は私の方にゆっくり体を向けると、真剣な眼差しで見つめて来た。
なんとなく雰囲気が刺々しく感じるのは私の気のせいかな。
小さくフルフルと首を横に振ることしか出来ない。
「あの日、“わかった”って言って帰ったじゃん」
否定してるのにシロー君は鋭い瞳を向けて言葉を続ける。
そんなこと言ったっけ……?
思い出そうとしてみても、あの時はショックが大きかったからよく思い出せない。
言ったような気もするけど……覚えてないや。
言ったとしても、そんな意味で言ったんじゃないような気もするけど……わからない。
「キスとか、した?」
前髪の隙間から覗くシロー君の力強い瞳。
威圧感に圧倒されてゆっくり後ずさっていると、トンッと背中が壁に当たった。
ど、どうしよう……。
もう逃げ場が、ない。
「し、してない、よ」
そのオーラは顔が整っているだけに本当に怖い。