「正直に言うと、ここまで急激に悪化するのは初めての症例なんだ。普通なら、長い年数をかけて緩やかに進行するんだがね。真白君の身体は透析治療も合わないのか、透析導入初期に見られる不均衡症候群も重いしね……。それによって、身体にかなりのストレスがかかっているようだ」



佐埜先生は、そう言った後目を伏せた。



不均衡症候群……。


確か透析治療を行う前に、説明された気がする。


血液の中の老廃物や色んな物質が急激に除去されるせいで、身体の中の恒常性がアンバランスになって起こる症状。


頭痛、悪心、嘔吐、血圧低下、不整脈、倦怠感など、人によって症状は様々。


ただ、これらは普通なら24時間以内に消失するものらしい。


だけど俺の場合は、次の透析の日まで続いていることが時々あった。



透析だけでも苦痛を強いられるというのに、これらの症状が重なると正直キツい時もあって。



だけど、ここまで耐えてこれたのは紛れもなく莉乃がいてくれたからだった。



そして先生は、ポツリと静かに次の言葉を放った。



「早くドナーが現れればいいんだが」




ドナー……。


わかっていたことだろ……?


ドナーが見つからなければ死ぬって。



いずれは死ぬって……。



けどその“いずれ”はもっと先で、まだまだ来ないもんだとばかり思っていた。


リアルにリミットを告げられたことで、動揺を隠しきれなかった。



“ドナーが見つかる”


そんな奇跡に懸けたいとキミは言ったね。



俺も思った。


“生きたい”と。



リミットは3ヶ月……。


その間にドナーが見つからなければ俺は……。