「南のこと、辞めんの?」


ふいに投げられた言葉。

あたしは、お菓子に伸びていた手がピタッと止まる。


でも次の瞬間ぶるぶると首を横に振った。


「辞めない。辞めるわけない。ってか、辞めようとして辞められるもんじゃないよ……」


悲しいことに。

あたしの南君への想いは相当だった様で、そんな事実を知っても"好き"という淡い感情だけは全く色褪せなかった。

確かに少し引いてしまうところはあるけれど、逆を返せば心優しい青年ってことで。


「ふ~ん。南もかなり罪深いよね。あの容姿でマザコンなんて。そのギャップがかなりウケル」


美帆はもう完全に引いてしまったよう。

生理的にダメなんだとか。


「マザコンマザコンって言うけど、南君はきっと優しいだけなんだよ。映画を見たいお母さんに付き合ってあげて。お母さんの好きな音楽を借りてあげて」