今日も君に翻弄される。

「美味しい?」


もちろん美味しい。


美味しいんだけど、これだけ苦労させられたのに、思惑のまま頷くのは悔しい。


美味しい、と、言いかけて。

美味しくない、と、言おうとして。


でも事実チョコは美味しかった、と、思い直す。


チョコさんに罪はない。悪いのは和泉くん。


「……うん」


返事は結局不本意な形に落ち着いた。


……仕方ない、愛しのチョコさんのためだ。


和泉くんは何気なく頷いて、一つ思いついたようにはっとした。


「鼻血出さないでね、葵」

「出さないよ! 和泉くんこそもっと彼氏っぽいこと言ってよ!」


人に言うばかりで自分はできてない、なんて一番駄目なパターンじゃないか。


何でこう、雰囲気のある発言をしてくれないんだ。


ぷんすか憤慨していると。