今日も君に翻弄される。

チョコ片手に向かってくる和泉くんを、首を背けて回避する。


もちろん、口は固く閉じたままだ。


「いいから」

「よくな、」


わたしの言葉を遮って、和泉くんが強い目をした。


静かにこちらを見つめる。


「――欲しいんでしょ? ほら」


そこで妖しい色気はいりません!


待って待って、指先で口をつつかないで!


「開けて」


結局、むずむずする和泉くんの催促に負けて、わたしはおずおずと口を開けた。


うわーん、顔が赤いよ。


怖じつ恥じつでためらうも、問答無用! とばかりに和泉くんがチョコの包みをはがしてしまった。


覚悟を決めて大きく開いた口内に、綺麗な指先からぴしりと弾かれたチョコが静かに落下して。


ふわり、濃い甘さが広がる。


和泉くんの持参だから、ビターチョコかと勘違いして警戒して構えてしまっていたけど、ミルクチョコだったらしい。