今日も君に翻弄される。

「持ってるけど、食べる?」

「食べる!」


深呼吸をして、頬の赤を取り払う。


表情が整ったところで、制服のポケットを探る和泉くんに振り向く。


当然、口を開けて待機。


がさごそ、と、四角いチョコを取り出しながら、和泉くんが言った。


「……雛みたい」

「ぴよぴよ!」

「…………」


確かに間抜け面だけど、チョコの前では意地なんて無意味なのです。


狙うチョコをガン見して、わたしは催促した。


「入れて入れて!」

「はいはい」


チョコの包みをむいて、つまんだ和泉くん。


美味しそうなそれに目を輝かせる。


わくわくしつつ、おとなしく待っていると。


ぽいっと放られたチョコは、


「……甘い」


和泉くんの口に落下した。


「じ、自分で食べたー!」


待機していたのも忘れ、呆然。


何でだ、今のはわたしにくれる流れだったはずだよ!


それを、

それを自分で食べちゃうとか、


「和泉くんの極悪非道人――!!」