今日も君に翻弄される。

「照れてる、って言ったんだよ」

「!」

「やっぱり葵は頭が悪い」

「…………」


教えられた答えに嬉しさが広がったのに、次いで即座に落とされてへこむ。


「ねえ、ああいう話を僕にするのは反則って言うんだけど、知ってる?」


それだけ少し早口に言い放って、行くよ、と和泉くんはわたしの鞄の肩紐を引いた。


青に変わった目前の信号を渡った先に、今日のお出かけの目的のお店がある。


「……知らないよ」


わたしは早歩きで追いかけながらもぞもぞ呟いた。


隣に並んだ和泉くんには聞こえなかったらしく、反応はなし。


……知らない、反則なんかじゃないもん。


だってわたしは学校の話をしただけだ。


数学はわたしの最不得意科目なのに対して、和泉くんの最得意科目である。


だから。