今日も君に翻弄される。

「葵」


怒ったような緊張感をたたえて、和泉くんが静かにわたしの名前を呼ぶ。


わたしは慎重に返事をした。


「……うん」


僕は、と。

言いよどむ彼氏様。


「………僕は、照れていなくもなくもなくもない」


!?


目を見開いて固まる。


え、と……どっちかな、これ。照れてるのかな、照れてないのかな。


ええと、ううんと。


なくも、なくも、なく、……なく、も……?

……えー……。


駄目だ、こんがらがってきた。


ぶつぶつ唱えながら指折り数えるわたしの渋面に和泉くんは押し黙り、一瞬の後に苦笑。


戸惑って一生懸命検証するわたしの頭を軽く小突いた。


「……馬鹿だね」