「葵って時々馬鹿だよね」


放課後。


どちらの学校からも少しずつ離れた場所で待ち合わせをして、歩きながら話をしていたときのこと。


隣を歩く和泉くんが、ぽろっともらしたわたしの愚痴に眉をしかめてそんなことを堂々と言うものだから、不安になった。


……何だって。


むむむ、と口が歪む。


愛想を尽かされても仕方ないような暴言を吐いたのは、一応わたしの彼氏様。


……自分の彼女に対しての発言にしては、ちょっと辛辣すぎやしませんか。


「ひどいよ和泉くん!」


慌てて抗議するも、騒ぐわたしにはお構いなしに、和泉くんは落ち着いた様で歩を進めている。


「周知の事実だ」


さらにつけ加えるならば掛け値無しの真実だ。


とまで言いきるので、思わず叫んでしまった。


「そこまで馬鹿じゃないよ、この間定期テストで国語九十六点だったよ!」

「僕は九十八点だった」


くっ、負けた。一番の得意科目が……!


いや和泉くんが頭いいのなんて知ってるけどさ。


まさかまさか、自己最高点を叩き出したのに敵わないとは思わなかったよ……。


がくりとうなだれる。


相手は強敵であった。