今日も君に翻弄される。

ひたすら沈黙するわたしを不思議がり、「葵? どうしたの?」なんて聞く和泉くんが確信犯だったらどうしてくれようか……!


君の照れにわたしも影響されているんだよ。


そう気恥ずかしげに黙り込まれると、わたしにまで赤さが移るんだ……!


頑張って目を合わせてみても、犯意は読み取れない。


というか、こちらが気恥ずかしさに負けて和泉くんを直視できない……!!


喉を落ちるホットコーヒーの高い温度は、ただただわたしの熱い体温を上げるだけのような気がしてきて、そっとカップを置く。


一旦小休止しよう。そう、一旦落ち着こう。


真っ赤な顔を手で扇ぐわけにもいかず、密かに深呼吸をして冷たい外気を取り入れる。


やけにはっきり聞こえる心音が、静かな空間とあいまって、和泉くんにも聞こえてしまいそうだ。


必死に冷気を送り込むわたしに、和泉くんが静かに問いかける。


「……飲まないの?」

「……ううん、えっと」


飲むよ、飲むともさ。


しかし。


しかしだ、こんなに凝視されている状況下では少々飲みにくいわけで。

どんどんほてる熱さを逃がしたいわけで。


逡巡していると、さりげなく甘い言葉を落とされた。


「飲ませてあげようか」

「……!?」


およそ和泉くんらしくもない台詞に瞠目する。


くすくす笑っているところを見ると、どうやら単に言ってみただけのようで。


くそう和泉くんめ、と、破れかぶれで感想を口にした。