今日も君に翻弄される。

思わずまじまじと見つめたまま固まっていると、動かないわたしの視線の先で、和泉くんは困ったように笑った。


「ねえ、葵」

「……う、ん」


優しい声色にどきどきする。


見つめられた赤い顔を自覚して、照れる。


「今日は葵が主役なんだから、葵に楽しんでもらえないと意味がない」

「主役……?」


まばたきを繰り返すわたしに、鈍感な彼女は楽な分少しやりづらいね、と言った。


「今日集まったのはね」

「……うん」

「もちろんテストも含むけど、葵の誕生日のお祝いが主な理由かな」


口実だよ。


「口実……?」


おうむ返ししかしていないわたしは、かなり頭の悪い子に見えるに違いない。


でも悔しいことに、それしかできないのだ。