「行こう、葵」

「うん。行こう、和泉くん」


これからのできごとは、分からないけど。


何が起きても、きっとすごく幸せで、きっとそんなに苦しくない。


和泉くんがクールにあっさり解決して、

わたしがもだもだと見苦しくあがいて、


それでも、そんなふうに、二人で笑って乗り越えていきたい。


ね、和泉くん。


喧嘩は多分するけど、ちゃんと仲直りしようね。


ご飯はいっぱい食べに行きたいから、お店、新しいところ開拓しようよ。


あ、もちろんおやつもだよ。


まずはこの間見つけたお店に行こう。


和泉くんはブラックコーヒーで、わたしはお砂糖たっぷりの甘いコーヒーで。

一口ずつ交換して。


映画も見に行きたいね。勉強だって頑張るから、分からないところは教えてね。


たくさんたくさん、迷惑をかけるけど。

きっと、馬鹿なことをしでかして笑われるけど。


どんなときもこの手は繋がっていたらいい。


大好きな和泉くんと、毎日を大切に過ごしていきたい。


それで、ときどき、和泉くんが好きだなあって思えますように。


「ねえねえ和泉くん、大好き」

「はいはい」


冷たく見せかけた言葉に、甘さを溶かして微笑んで。


和泉くんはそっと、確かめるみたいに手を繋いだ。