困った表情の和泉くんの手を、ぎゅっと握る。


大きな手の持ち主は、黙ってされるがままにしている。


人前で手を繋ぐのなんか反対派の和泉くんが、そっとわたしの手を握り返した。


「話せるよ。話すよ」


どうせ、わたしは。


わたしから和泉くんと話さなくすることなんて、できっこない。


和泉くんを嫌いになんて、なれっこない。


和泉くんは和泉くんだから、わたしは和泉くんが好きなのだ。


「少なくともわたしは、和泉くんと自然消滅しちゃう気はないんだからね」


ふんす、とからかいに目を細める。


冗談にしてしまわなければ、わたしが耐えられないから。


「うわあん和泉くんのお馬鹿ー、ってうるさく泣きわめく用意はできてるよ」


さあ来い! と笑いかければ、和泉くんも笑い返した。


「どんな用意、それ。葵のことだから絶対抜けてるし」


結構ひどいことを言う相変わらずな和泉くん。


「まあ、その」


現実的な彼氏さんは、勢いよく前を向いて、


「和泉くん?」


口を開きかけ。


もう少し横を向いて、ぽそりと言った。


「……泣かせないようにする」