「和泉くんは?」

「決めかねてる」


首を振ってみせる和泉くんに、ふんだ、とわたしはいささか大げさに言った。


「和泉くんのことだから、選り取りみどりなんでしょ」

「そうとも言う」

「…………」


ぬぬぬ。肯定したぞこの人。


全然大げさじゃなかったらしい。


まあ、和泉くんだからね。


そっか、と呟いたわたしに、和泉くんは何気なく考えを口にした。


「でも、一つ願っていることがある」

「うん?」


何だか、和泉くんがわたしを見ている気がして、見上げれば。


かちりと目が合う。


普段は真っ直ぐ前を見る和泉くんが、わたしを見ていた。


微笑んで、こちらを見ていた。


「大学生になっても、ばらばらになっても」

「……うん」

「大人に、なっても」


無欲でクールな和泉くんが、思いをゆっくりゆっくり唇にのせる。


「僕は、葵と話せたらと思う」