今日も君に翻弄される。

「でも、葵は好きだったでしょ、甘いコーヒー」

「っ」


覚えていて、くれたのか。


ぎゅっと唇を噛んでまばたきをする。


大きく心臓が跳ねた。


「和泉く」

「こんなもののどこが美味しいのか、はなはだ疑問だけど」

「…………うん、ソウダネー……」


……一言余計です、和泉くん。


せっかくいい感じの雰囲気だったのにぶち壊しじゃないか。


気落ちしたのが何だか悔しくて、勢いだけで言い返す。


「でも好きなんだよ!」


反論にすら全くならない、わたしの馬鹿丸出しの返答に。


「知ってる」と。


和泉くんは無表情で端的に頷いた。


「大の甘党で角砂糖は五つ入れるのに、一人二つしかなくて困ってたことも知ってる」

「え……」


淡々とした顔つきで、和泉くんがすっと自分のお皿をわたしの方に滑らせる。


――それから。


「くださいって言ったら連れの僕が恥ずかしいんじゃないか、なんていらない心配をしてたことも、知ってる」