今日も君に翻弄される。

和泉くんが手慣れた様子で引き戸を開けて、入るよ、と軽く断りを入れる。


「お疲れ様です」

「お疲れ様でーす」

「お疲れ様です、って秋庭先輩どうしたんですか?」

「ごめん、少し借りる」

「あ、はい」


何人いるのか見えないけど、会話を鑑みるに、三人くらいかな。


和泉くんが振り返る。


いいよ、と促すように頷いてくれたので、お辞儀を一つ。


「失礼します」


和泉くんの後ろから現れたわたしに、皆さんの顔が一様に「!?」ってなった。


うーん、全然知り合いじゃないからね、驚くよね。


「彼女か?」「彼女かな」、なんて小声を和泉くんは華麗に全部スルーして、準備を始めた。


「こっち」

「うん」


白衣をまとう和泉くんが引いてくれた、隅っこの椅子に座る。


皆さんの邪魔をなるべくしないように、小声で会話。


でも、何をするとかわたしは誰だとか、皆さんに一切の説明をしないものだから、さっきからちらちら見られている。


見慣れないわたしの姿がどうにも気になるのかな。


「実験はカルメ焼き一択でしょ、どうせ」

「だって食べられるし」

「はいはい」


さすがの阿吽の呼吸で、ためらいなく器具を取り出す和泉くん。


食意地張ってるのはばれてるからいいんだけど、ちょっと何か。


こんなによく理解してくれてるのに、あんまり嬉しくない。


さすがわたしクオリティ。

……悲しい。