今日も君に翻弄される。

「……ねえ、葵」

「うん?」


どうしたの、と見上げる。


「実験さ、他の部員いるから、その人たちにやってもらわない?」


他の部員さんにやってもらったっていい。

百円なら構わないさ。


でも、できることなら。


「和泉くんのも見たい」

「…………」


和泉くんが少し困っているけど、これは譲らないもんね。


見たいったら見たいんだもんね。


そもそも和泉くんは、本当に嫌で駄目なら最初からわたしに期待なんてさせない。


困っているこの状態はつまり、恥ずかしいとか、準備が、とか、そういうことだ。


押して押してみたって大丈夫。


「駄目かな」


聞くと、目を伏せた和泉くん。


「……今僕は私事で来ているんだから、仕事を奪うのはいけないと思う」

「俺らはいいですよ!」

「…………」


あ、和泉くんがものすごい目付きで店員さんをにらんだ。


だ、大丈夫ですか、ごめんなさい店員さん……!


縮こまる店員さんに心中謝罪して、表面上は静かに和泉くんの返事を待つ。