今日も君に翻弄される。

きょろきょろと忙しく視線を動かしていると、ちょうどよく品物が来た。


「以上でよろしいでしょうか」と店員さんが確認する。


通常ならそのまま去るところだけど、頷いたわたしに被せるように、すみません、と和泉くんが行儀よく引き止めた。


「砂糖もう一つください」

「……え?」


その薄い唇から飛び出た言葉が似合わなすぎてびっくりする。


え、え? お砂糖……?

和泉くんが、お砂糖……!?


お皿の上に鎮座するお砂糖と和泉くんの間を、瞳が交互に行き来してしまっている間に。


「畏まりました」


店員さんがてきぱき承って、和泉くんのコーヒー皿に添えられたカップに角砂糖を足す。


和泉くんがお礼を述べ、微笑んだ店員さんは丁寧にお辞儀をして静かに下がった。


……いやいや、待って、全然かしこまらないよ。


「和泉くん、コーヒーはブラック派じゃなかった?」


息急ききって聞く。


もし間違えて覚えていたのだとしたら問題だ。