今日も君に翻弄される。

ちょっとくらいいいんじゃないかなあ、とか思ってたんだけど、行かなくてよかった。


よくぞこらえた、えらい、わたし。


す、と後ろから出てきた和泉くんが、まず後輩さんの頭をぺしっとはたく。


「ちょっと佐竹、何無理な客引きしてるの。余計にお客さん減るからやめてくれる」


いきなり後ろから叩かれて不満げな表情をしていた後輩さんは、冷たい声音に相手を察した。


「うわ、先輩!? 待ち合わせしてるんじゃ、」

「葵」


後輩さん、もとい、佐竹さん? をすっきり無視して、和泉くんがわたしを呼ぶ。


ええ!? とか横で騒いでいるのに、マイペースだなあ、和泉くん。


「和泉くん、」


不自然に途切れたのは、手を伸ばそうとして遠慮したから。


ほんのちょこっと困っていた。

あと、すこーし近かったから、身長差と壁でちょっぴり怖かった。


でも、和泉くんにいきなり甘えるのはよくない。


和泉くんにだって体面がある。


わたしに突如抱きつかれたら嫌がるに決まっている。


和泉くんは固い顔をしたわたしをかがんで優しく覗き込んで、柔らかに笑った。


「葵、大丈夫? びっくりしたでしょ」


直前に後輩さんの頭をはたいた手が、ぽん、とひどく優しくわたしの頭をなでた。