今日も君に翻弄される。

ちらり、盗み見ると、和泉くんは手まで綺麗だ。


何でお冷やを飲むだけで、こんなにも優雅さに差が出るのか。


わたしが粗忽なのかな、……多分。


あながち外れていないだろう原因にうなだれかけて、手つきとか姿勢とか、見習えばいいんじゃないか、と気づく。


和泉くんをもっと観察したくなった。


一応こそこそ隠しながら再び盗み見る。


本当手綺麗だなあ、和泉くん。


……くそう。羨ましい。


じろじろ見ていたら呆れられた。


「葵見過ぎ。僕に穴が開く」

「ご、ごめんなさい」


和泉くんは怒ると大魔王様なみに怖いので、素直に謝る。


長引かせるとろくなことがない。


「まあ別にいいけど」


そんなに怒ってはいなかったのか、あっさり釈放してくれたのに安堵。


これ以上目の前の人を観察するのは諦めて、おとなしく凝った店内を見渡した。