今日も君に翻弄される。

「交換しなくていいよ。でも一口だからね」

「和泉くんありがとう!」


はい、と、お皿を滑らせてくれる。


わくわくしながら慎重にフォークを入刀したわたしに、念を入れて何度も何度も、「一口だからね」と繰り返す和泉くんに、


「わたしそこまで食いしん坊じゃないよ! 大丈夫だよ!」


と、思わず食い気味に申告するも。


「自己申告はあまり信用ならない」


生真面目な表情で首を振って、さらりと軽やかに流された。


「ひどいよ和泉くん!」

「残念ながら、明らかな事実だ」

「残念ながら明白な虚偽だよ!」


にぎやかにおしゃべりをしつつ、それぞれ食べ終わったところで、店員さんを呼ぶ。


ケーキと飲み物を頼むセットメニューに二人ともしていた。


少し遠い離れた席に座っているスーツのお姉さんが飲んでいるハーブティーが気になった身としては、条件として必ずコーヒーと紅茶から選ばなければならないのが少し悲しいけど、奢ってもらうのだから当然お安くなった方がいいってものである。


「葵どっち、コーヒー、紅茶?」


どっちでもいい気分だったので、和泉くんに合わせることにした。


たまには同じものを頼むのもいいよね。


「和泉くんどっち?」

「コーヒー」

「じゃあわたしもコーヒーで。あったかいやつ」


了解、とホットコーヒーを二つ注文してくれた。


お冷やを一口飲んで、緊張からか、実はまだ少し早い心音をなだめる。