今日も君に翻弄される。

よく見ようと動かした視線が、看板に大きく書かれた赤い文字の上で止まる。


恋人割引!?


名前からしておかしい。


ファンタジーでどうしてそんなセールになるんだ、と確認してみたら、バレンタインが近いかららしい。


恋愛ものはもっと安くなるみたい。


でも恋愛ものは和泉さんはあんまり得意じゃないし、

わたしは和泉さんと隣で見られる自信がないしで、結局見ない。


次に安くて、二人とも見れて、わたしが気になっているこれは、ちょうどいいとは言える。


というか待って、わたしもしかして自分から誘ったら変な人だった!?


間違ってよかった、ううんよくない。


元凶だしなー……うん、現実逃避してないで真面目に考えよう。


半額かあ、うん、半額かあ……。


確かに安くなる、けど……この映画見たさの一時的な恋人は、ちょっと、嫌だなあ。


「あの」


決めかねるわたしの耳に落とし込むように、和泉さんが申告する。


余韻に誘われて顔を上げると、和泉さんがひどく強張った口を開いて。


「ちゃんと好きだから。割引のためじゃないから」


かすれた声が、わたしの頭を、真っ白に塗りつぶした。