今日も君に翻弄される。

涙目で見上げる。


「ごめんなさい、あの、」

「良いんだ」


和泉さんは優しく遮った。


「和泉で良い、名前で大丈夫だから待って、帰らないで」


立ち止まると邪魔だ。


周りに人がいない隅に連れていかれる。


「座ろう」

「うん……」


示された通り隣に腰を下ろす。


鞄の肩紐をぎゅっと握って、訪れた沈黙に耐えた。


……良いんだ、ってどういうことだろう。


わたし、いきなり名前で呼んだんだよ、嫌じゃないのかな。


わたしなら友達からいきなり名前で呼ばれたらびっくりする。


ただの知り合いからなら、なおさら。


わたしと和泉さんの関係の名前はわたしには分からない。


でもきっと、友達じゃない。


きっと、

きっと、名前をつけるとしたら、知り合いってつけると思うんだ。


「あの、秋庭さん……?」

「和泉」

「え、」

「和泉で良いよ」


あの。


「和泉で良いから、良ければあれ見ない? ……割引で」


割引? 三十分後のだろうか。


確かに割引って書いてあるけど……えっと、

え、