今日も君に翻弄される。

走る。

ひたすら走る。


待ち合わせ場所には驚異の十五分で着いた。


いつも二十分はかかるのだから、わたし頑張ったと思う。


激越として荒い息を整える。


「お待たせしました……!」


がばり、頭を下げる。


まばらな人波を見渡してわたしを探していた和泉さんは、穏やかに頷いた。


「いえ。大丈夫ですよ」


いつでも静かな和泉さんの声が、大きく息を吸い込むわたしの呼吸の合間を埋める。


「会場は駅前ですから、時間に余裕があります」


ゆっくり歩いてもすぐ着きますよ。


ことさら丁寧な言葉遣いと、語り口と、間と。


気遣うような、さりげないまなざし。


わたしの呼吸が整うと、和泉さんはそっと微笑んだ。


「行きましょうか」

「はい」


流れる後ろ髪を追いかける。