今日も君に翻弄される。

そうこうしているうちにお店に着いて、怖気づいたわたしの代わりに和泉くんが扉を開けてくれた。


席は自由に座っていいみたいなので、隅っこの方に陣取る。


目の前の壁にかかっている小さな絵と、その周囲を丸く切り抜いた場所にはめられた色とりどりの綺麗なステンドグラスが、外の夕日に薄桃色に透けている。


わたしは和泉くんおすすめのチョコレートケーキを、和泉くんはラズベリーとブルーベリーのチーズタルトを注文した。


チョコレートケーキは、甘さの違うチョコクリームが層になって重なっている。


スポンジもチョコレートがよく染みていて、削ったチョコと金箔が上面を飾る。


タルトは季節のタルトらしい。


色合いが華やかで可愛くて、何だかとっても美味しそうだったので、一口もらえないか交渉してみた。


「和泉くん、一口ずつ交換しよう!」


そこまで言ってしまったところで思い出した。


駄目じゃんか。


和泉くんすでに食べたことあるやつだよこれ。


交換するメリット皆無だよこれ。


馬鹿な自分がいたたまれない。


うわーん、でもタルト食べたかった……!


悲しみに打ちひしがれるわたしを認め、和泉くんが言った。