かたんと音が鳴った椅子に申し訳ない気持ちになりながら、今度はそっと座る。


すすめてくれたんだから、

お友達が来るかも、とか迷惑がかかるかも、とか考えなくてもいいはず。


遠慮なく座っても大丈夫なはずだ。


筆記用具を並べていると、和泉さんは作業を中断して微笑んだ。


「鉛筆、持ってきたんですね」

「あ、はい。お借りしたとき素敵だったので」


持ってきます! って言っちゃったのもあるけど、本当に本当に素敵だったから。


シャーペンより早く塗れる。


解くのが遅いわたしには、シャーペンで必死にちまちま塗るよりずっと楽だった。


「鉛筆削りもちゃんと持参しました!」


胸を張ると、和泉さんがくすりと笑って何かを取り出す。


「じゃあ、ちゃんと持ってきたごほうびに」

「ごほうび?」

「という名の、前回のお礼です」


頂いたクッキー、美味しかったので。


こういうところがずるい。断れない。


「糖分補給は大事、ですから」


きちんと覚えていてくれたんだと分かる台詞も、お礼の飴も。


ずるい。


結んだ唇に思いを閉じ込めて、かすかに弧を描く口元を見つめる。


「貰ってください」


そっと手を差し出して、飴を受け取る。


一つ、さっそく口に入れれば、和泉さんが嬉しそうに笑みをこぼした。