「おひさしぶりです。あの、覚えてますか……?」


一応心配になって聞いてみる。


覚えてないとか言われたらわたしは退散する。


涙目で退散して、持ってきたお菓子をやけ食いしよう。

うん、それだ。


いささか悲痛な覚悟を決めて返答を待つ。


「はい。お久しぶりです」


しっかり首肯して、うじうじするわたしに少し笑った和泉さん。


何だろう。何で笑われてるんだろう。


そんなに面白い顔でもしたかな。


推測を重ねても分からなかったので、とりあえず疑問は放置。


隣いいですかとは言ったものの、不安になってきて座るに座れないわたし。


「隣、良ければどうぞ」

「ありがとうございます、って、わー!? 自分でやります……!」


世間話を続けていた和泉さんが察して、隣の椅子を引いてくれようとしたので、慌てて自分で引いた。


焦った。

焦りすぎて、一瞬、一生懸命小声で話していたことも忘れてうるさくなるかと思った。