今日も君に翻弄される。

「葵に美味しくないものを食べさせる訳ないでしょ、僕が」


和泉くんを見るも、横を向いてしまっていて表情は分からない。


顔が見たいと思った。切望した。


染まっていく和泉くんの耳を無意識に目で追う。


…………あ、れ?


見つけた気持ちに驚悸する。


変だ、わたし。


心臓が一度大きく鼓動した。


確かに響いた脈に思想を奪われる。


あまりのときめき過多に許容量を軽々超えてしまって、顔がひどく熱い。


ものすごく照れると心臓がうるさいんだな、と馬鹿なことを思った。


何だか慌てる素振りを見せたくなくて、懸命に思考を切り替えて質問する。


「そうなの?」

「そうだよ。だからチーズケーキはやめなね」


小さく頷いて、下を向いていることしかできなかったわたしはきっと悪くない。


和泉くんはたまに、いや結構頻繁にずるい。


無自覚に甘い発言をして気づかない。