「あの、お菓子すっごく好きです。でもわたし、お礼をいただけるほどのことはしてないと思うんです」

「私は思います」


ああそっか、わたしの言い分だと和泉さんを軽んじている、とも捉えられちゃうのか。


和泉さんが少し困っている。


「……駄目ですか?」

「駄目じゃないけど駄目で……!」


ああもう、どうしたらいいんだ。


素直に受け取ればいいのかな。


だってティッシュだよ、お徳用だったから一つ五十円くらいだよ!?


和泉さんのお礼はコンビニスイーツだけど、でも絶対百円はするよ、割に合わないよ!


沸騰しそうな脳内に、密かに深呼吸をする。


でも、でもだ。

厚意を突き返すのはあまりに失礼だ。


ちょっと冷静になったわたし。


うん。そうだよね。


「あの、いただきます。ありがとうございます」


大事に食べます、と手を出すと。


はい、と、和泉さんが綺麗に笑った。




ある冬の日の、偶然。


わたしと和泉さんの出会いを繋いだのは、たった一つのティッシュだった。