「クッキーとマドレーヌなら、どちらがお好きですか」

「マドレーヌです、が、あの」

「分かりました」


戸惑うわたしはいささか放置されるらしい。


あの、わたし、何でアンケート取られてるんでしょうか。


説明をお願いします和泉さん。


頭上いっぱいに疑問符を浮かべるわたしに、和泉さんは少し照れたように前置きした。


「嫌だったら捨ててください。それから、あの……笑わないでくださいね」


かさり、取り出されたのはコンビニの袋。


小さいそれが、今だ状況を呑み込めないわたしに渡される。

ちょうど、わたしが和泉さんにしたのと同じに。


「お礼です」

「え」

「ありがとうございました」


ぺこりと下げられた頭につれて髪がさらりと流れた。


何となく艶やかな仕草を見送って、一拍、はっとする。


「けけけ結構です、大丈夫、そう大丈夫です! 待ってください、いただけません……!」


もはや錯乱しすぎて意味不明になる口調、

ばたばたと荒ぶる身振り。


引き留めたわたしを和泉さんは悲しそうに見つめた。


「できるなら、ぜひ受け取って頂きたいのですが」


どうしても、受け取って頂けませんか。


なんて、ああ、そんな目をしないで。


「でも、そんな、あれでお礼をいただくなんて」


余ってたティッシュ渡しただけだよ、わたし。

つまり余りもの押し付けたようなものだよ。


お菓子はすごく好きだし嬉しいけど、ここで嬉々としてもらっちゃ駄目でしょう。