今日も君に翻弄される。

頑張って何度も深呼吸をする。


落ち着けわたし、落ち着けー。


一人もだもだするわたしを訝しげに見遣りながら、


『和泉くんレアチーズも食べたの?』


という問いかけに、食べたと律儀に返事をくれたけど、そうではなくて、わたしが本当に言いたかったのはこれなのだった。


「和泉くん、ケーキ好きなの?」

「…………葵、どこか頭打った?」


軽く眉をしかめた和泉くんがわたしを覗き込んだ。


「待ち合わせから僕はずっと葵の隣にいて、そんな場面は見ていないと記憶しているんだけど、違ったかな」


なんてひどいことを言う。


「嫌いなら企画しないに決まってるでしょ。自分を追い込む性癖は僕にはないよ」


はあ、と重い溜め息を吐く和泉くん。


まあそれはそうなのだけど。


「コーヒー飲むだけかと思ったんだよ……!」


しぶしぶ本音を告げると、は? という顔をされた。


う……だって、和泉くん甘いもの毛嫌いしてそうじゃないか。というか毛嫌いしてるんだとばっかり。