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『葵』

「うん?」

『次いつ時間あいてる?』

「いつでもっ」

『いつでもってことはないでしょ。ほら手帳見て』

「えっと、でも本当に今週は大丈夫だよ」

『じゃあ今週末、見たいって言ってた映画公開するみたいだから、行こうか』

「(覚えててくれた。調べてくれたんだ……!)

 分かった。楽しみにしてるね! ありがとう和泉くん!」

『どういたしまして。……あのさ。葵』

「ん? 大丈夫だよ、生徒手帳とかお財布とか持ってくし、忘れ物の確認だってちゃんとするよ」

『そうじゃ、なくて』

「うん」

『あの。……好き、だから』


好きだよと断定はできずに、和泉くんはゆっくり電話を切った。