今日も君に翻弄される。

「大丈夫。僕昨日一人で下見したけど高校生も入れそうだったから」


……ひ、ひ、ひ、一人でだと。

何だそれは何だそれは。


和泉くんが一人でケーキとかどんなシチュエーションだ。


わたしは見上げたまま固まった。


こんなときであっても歩いてはいるんだから、習慣とはすごいものだ。


おかげで和泉くんに不審がられなくて済むよ。


首が固定状態のわたしに気がつかずに、和泉くんは今だ昨日に思いをはせている。


「チョコケーキは美味しかった」


葵チョコ好きでしょ。


淡々とそんなことをのたまう。


覚えててくれて嬉しいけれども待って、待つんだ和泉くん。


わたしはあわあわと息を吸った。


吐けばいいのに吸った。


……うん、むせそう。


「落ち着いて!」

「落ち着くべきなのは葵だ」


それもそうだ、ってそうじゃなくて。


残念なものを見る目をしないでください和泉くん。