今日も君に翻弄される。

『和泉くんならいいもん!』


負けたって悔しくないよ、とまで言い切る葵。


……いや、駄目でしょ。


僕は苦笑が漏れた。


『悔しがりなよ。悔しさは人を高めるよ』

『(和泉くんが爽やかなスポーツマンみたいなこと言うー……)』


実際、葵はあまり悔しがらない。


どこまでもひたすらマイペースに邁進するのだ。


例え誰かが先を走っていても、平気で歩いて後ろから付いていって、


見失わなければいいやー、とか。

むしろわたし迷わないよやったねうわーい! とか。


焦らないし前に出たがらないし、のんびり観光気分で道端の花を眺めている。


そんな人だ。


消極的だ、欠点だ、と言う人もいるようだけど、一概に決め付ける真似はできなくて。


僕は、葵の割りと長所で絶対可愛いところだと考えている。


……恥ずかしいから本人に伝えたことはないけど。


もし伝えたら、確実に葵は浮かれて足元不注意で転ぶ。


そんな未来が容易に想像できてしまって、どうしても慄く。


あまり痛い目には合って貰いたくない。