今日も君に翻弄される。

和泉くんが条件に出したケーキというのは、今日のお出かけの最大の目的で、一つまでなら奢ってもらえる約束をしている。


今日がわたしの誕生日なので、ご飯かおやつでも食べに行こうか、と和泉くんが企画してくれたのだ。


テストお疲れ様でした会と、誕生日のお祝いを兼ねているんだとか。


「その日、放課後あいてる?」と、帰り際、とりあえずのように何気なく確認されたときは驚いた。


和泉くんは大事なことは絶対に会って言う人だから、電話でもメールでもなく、口頭だったことが、何となく重要度を示すようで。


わたし、すごく大事にされてるんじゃなかろうか、自惚れてもいいんじゃなかろうか、とその後しばらく舞い上がってしまって、その夜は全然寝つけなくなってしまったくらい、とても嬉しかった。


和泉くんの大事なものの範囲は結構狭い。


大事なもの、扱いには気をつけるもの、優先順位が低いもの。


そんな分類の上、ずっと大事なものに入れている項目は少なくて、その他のカテゴリーへの分け方は実に大雑把だ。


――大事なもの。


その貴重な区切りの内側にいられているのが確認できて、どうしても頬が緩んでしまったんだっけ。


和泉くんって、あんまりそういうこと言わない人だから。


誕生日だって気づいている素振りもなくて、覚えていないんだとばかり思っていたんだよね。


期待もしたし嬉しかったよ、嬉しかった……けど。