今日も君に翻弄される。

「本当に? 言っていいの?」


和泉くんがふいに真面目な目つきをした。


からかうのでなく、ふざけるのでも、当然なく。


「え」


どもるわたしの耳に入り込むその声までも、心なしか甘くて低い気がした。


大好きな和泉くんのお声が、豊かに、甘美に、反響する。


鼓動がうるさかった。


「ねえ、葵」

「っ」

「答えてくれないと分からない」


何だね、どうしたんだいいずみくん……!


二人とも今日は風邪気味では、なかったはずなんだけど。


風邪でないならどこか打った、とか。


たとえばほら、大脳とか。


おかしい。

おかしいよ。


……わたしは何か行動を間違えて、うっかり変な選択肢を選んでしまったらしい。