「ま、一晩考えてください」
「一晩?」
「はい。シッコウは明日です」
「シッコウっていうなよ。まじで」
「今更になって命乞いをなさるならあ、加穂留のメッセージ、思い出してください。一生懸命書いたんですから。それに、恐怖を抱きながら一晩過ごすのも、いいものですよ」
こんな直射日光の下、遮るものもないところで夜になるまでいるのんて、無理だ。
一晩恐怖を抱いて過ごせだと。
このクソ女。
だんだん暑くなってきたし、喉も乾いてきた。
加穂留は水だけは置いていったし、頼めばどんだけでも水はくれると言った。
加穂留とキクカワは俺を置き去りにしたまんま、船内の冷房の効いた部屋に入り、俺は海の上にひとりぼっちにされた。
サメは相変わらず回りにいるが、数は少なくなっていた。
さあ、考えるんだ。
暑かろうがなんだろうが、死にたくない。死にたくないんだ。こんなところで死にたくない。怖い。
恐怖は依然としてあるが、ゆっくり考える時間ができた。これで明日までにメッセージを思い出せば、助かる。
助かるんだ。
死にたくない。
こんなサメの腹の中に入るなんて、考えただけで全身の毛穴が開き、毛が逆立つ。足の裏にいやな汗をかいて、下っ腹を鈍器でくすぐられるような感覚に陥る。

