カシャンという音をたて、キクカワはナイフを手に取った。
冷たく光を発するナイフがキクカワの顔を輝かせたとき、彼の口元にうっすら笑みが浮かんだ。
瞬きをひとつ。
口角をニッと上げたキクカワは、上唇を舐め、ナイフに軽くキスをした。
雰囲気が変わった。
空気の流れが変わった。
嫌な気をかんじ、ぶるりと震える体。
「キクカワ、そろそろいい? 次もあるんだからさっさと片付けましょう」
「……………はい」
「じゃほら、今度は私がビデオ回すから」
「……………はい」
加穂留はビデオの電源を入れ、録り始めた。
キクカワはゆらりと立ち上がりナイフを弄んでいる。
目が正気じゃない。
狂ってる。
ぶつぶつと何かを言いながらふらふらと歩いては壁にぶつかり、その度に方向を変えて繰り返す。
こいつ、おかしい。

