タバコを投げ捨て、靴でもみ消した。
動かないキクカワの隣へ歩み寄り、座る。
「ほら、見てキクカワ」
その白くて細い手をにゅっと伸ばし、キクカワの顔を持ち上げた。
「あんたがこうして縛ったサトミサマ、そろそろシッコウしないと」
シッコウ?
私を縛ったのは……キクカワ?
そんなはずはない。加穂留に騙されてるんだ、そうに違いない。だってこんな人がするなんて思えない。
キクカワも騙されているんだ、彼も被害者なのかもしれない。
「そこにあるナイフを持って、いつも通りに仕事をこなせばいいのよ。わかる?」
「……………わか………る」
「いい子ね、ほら。じゃ、あとは何をすればいいのか、分かるでしょう」
「わ……かる」
「サトミサマ、そろそろお湯も熱くなってきたでしょう? でも安心してください。すぐに分からなくなりますから」
「おねがい、おねがい、おねがい、おねがい、おねがい、
やめてよ。こんなことしないでよ」
「またそういう冗談を。みんなそうやって言うんですよね。おかしな話。みんなが自ら望んでやってきたことなのに、なんでか分からないけど、最後には加穂留がみーんな悪くなっちゃうんだもん。ひどい話ですよねほんと」
「おねがい」
「おねがいはもう聞きましたよっ。そんなにたくさん欲張っちゃダメです」

