「キクカワ」
冷たい声。
キクカワの靴音とはまた違う軽い靴音。
ハイヒール。
加穂留だ。
その声にキクカワは体を固くして動かなくなった。
もちろんそれは私も同じ。
「ほら」
キクカワの手元に投げ捨てられた物は乾いた金属音を上げて、くすんだ銀色の光を放った。
握ってもらうのを待っているかのようにじっと動かない。
キクカワはそれを睨み付け、加穂留はそれを見ながらタバコをふかしている。
更に、私はそんな光景を『他人事』のように見ていて、
自分がこれからコロサレルなんて考えもしなかった。
だってそうでしょ?
自分が、これからコロサレルなんて、誰が思う?
今から遅くても一時間後にはこの世にいないなんて、
考えられる訳がない。
そんなこと、あるはずがない。
あったら……………
「困る」

