「私だって、そんなに余裕なんてないんですけど」
「? そういえば、この袋はなんだ?」
その後無言で手渡された紙袋に、首を捻りながら受け取ると、麻子が照れ隠しのように目を逸らす。なにか怒っているのか、と思うような表情だが、顔をまた赤くしている様子からみて、怒っているわけではないらしい。
「――今日。誕生日ですよね」
「……そう言われれば。でも、なんで。そんなこと一度も聞かれた覚えは、ない――」
敦志や雪乃にでも聞いたのかと思いかけたが、麻子の性格だ。身近な人間に、そんなわかりやすい内容を聞くことなんて恥ずかしくてしないだろう。
そこまで考えて、ふと、思い出す。
「……以前(まえ)に、社内報を見ましたから」
自分が一番初めに惚れ込んだ、麻子の長所を。
納得した純一は、今度は手元のプレゼントが気になって仕方がない。我慢できずに、その場で包装を解き始めると、麻子が慌てる。
「ちょっ……自宅に帰ってから――」
「今寄こした君が悪い」
あっという間に中身が露わになったプレゼントとは――――。
「……弁当箱?」
さすがの麻子も悶絶するように、片手で目元を抑えて閉口する。
少し間を置いて、開き直るかのように麻子が口を開いた。
「……たぶん、雪乃さんの方が、よっぽどセンスのいいプレゼントをお渡しするんでしょうけど」
比べるものではないが、女性らしく、可愛い雪乃とはまるで違う自分という人間を、麻子なりに理解しての発言。
言い訳ではないが、麻子は今までそういうことをひとつもしてこなかったから、本当に悩みに悩んでそれにしたのだ。



