「……こんな祝いの場で、いうことじゃなかったね。でも、ひとつだけ」
そう言葉を一度区切ると、もう一度純一と真正面から対峙して顔を上げる。
「今日まで、きちんと向き合えなくて申し訳なかった。それでも、こんなに立派に成長したこと、誇りに思ってる。今までも、これからも――わたしにとって、大事な息子だ。どうか、しあわせに」
俯いて、歯を食いしばる純一の父は、湧きあがる感情からの涙を堪えていた。
間近にいる麻子と純一は、当然そのことに気がつくが……。
「ふざけるな」
緊迫した空気の中、それを打ち破るようにして言ったのは純一。
「オヤジを憎んだことなんて、一度もない。勝手に加害者みたいな顔で謝るなよ。まるで俺がガキみたいだろ」
フン、と鼻であしらうように、いつもの口調で純一は言う。
けれど、麻子にはわかっていた。そんな態度が、〝うれしい〟という感情の裏返しだと言うこと。それと、ほんの一瞬、嬉しそうな目をして父をみていたことを。



