*
「よかったね。しばらくここにいていいって。仕事終わったらすぐに来るからね」
子犬にミルクをあげながら、慈しむような眼差しで声を掛ける。しばらく膝を抱えたまま子犬を眺めていると、純一の言葉を思い出して、弁当を手に取った。
イマドキの、小さめで可愛らしい弁当箱。それを開いて、〝もうひとつのお弁当〟を思い出す。
(……男の人のお弁当箱なんてないから、足りてないのかもしれない)
ふと、純一にほぼ毎回渡している弁当を思い出して、思った。
(でも、食が細いほうな気もするからちょうどいいのかな。健康な男の人って、よくわかんない)
箸を口にくわえたまま、ボーっとそんなことを考える。
その視界に映るのは、今まさに考えてる純一の部屋なわけで。不意にそんなことに気付くと、急に気恥かしい思いに駆られてしまう。
別に初めてでもない。何度かすでに訪れてる、純一の部屋。
けれど、主がいないのに自分がいる感覚がどうにもヘンな感じがして。そんな〝違和感〟に、改めて、彼が自分の恋人なのだと認識させられる。
「……ヘンなの」
ここに初めて足を踏み入れたときのことを思い返しては、そう呟いた。
あのときは、麻子は自ら家に上がったわけではなく、意識のないときに運ばれていただけなのだが。
それでも、あのときの妙な緊張感が、今でも思い出せてしまって。
麻子は誰もいないのに、照れた素振りを隠すように俯いた。
「人って、未来(さき)がどうなるかなんて、わかんないものね……」
心の声を口にすると、子犬とぱちっと目が合った。
「おまえも、きっといい出会いがあるはずよ」
優しく目を細めると、コワレモノを触るように子犬を撫でた。
「よかったね。しばらくここにいていいって。仕事終わったらすぐに来るからね」
子犬にミルクをあげながら、慈しむような眼差しで声を掛ける。しばらく膝を抱えたまま子犬を眺めていると、純一の言葉を思い出して、弁当を手に取った。
イマドキの、小さめで可愛らしい弁当箱。それを開いて、〝もうひとつのお弁当〟を思い出す。
(……男の人のお弁当箱なんてないから、足りてないのかもしれない)
ふと、純一にほぼ毎回渡している弁当を思い出して、思った。
(でも、食が細いほうな気もするからちょうどいいのかな。健康な男の人って、よくわかんない)
箸を口にくわえたまま、ボーっとそんなことを考える。
その視界に映るのは、今まさに考えてる純一の部屋なわけで。不意にそんなことに気付くと、急に気恥かしい思いに駆られてしまう。
別に初めてでもない。何度かすでに訪れてる、純一の部屋。
けれど、主がいないのに自分がいる感覚がどうにもヘンな感じがして。そんな〝違和感〟に、改めて、彼が自分の恋人なのだと認識させられる。
「……ヘンなの」
ここに初めて足を踏み入れたときのことを思い返しては、そう呟いた。
あのときは、麻子は自ら家に上がったわけではなく、意識のないときに運ばれていただけなのだが。
それでも、あのときの妙な緊張感が、今でも思い出せてしまって。
麻子は誰もいないのに、照れた素振りを隠すように俯いた。
「人って、未来(さき)がどうなるかなんて、わかんないものね……」
心の声を口にすると、子犬とぱちっと目が合った。
「おまえも、きっといい出会いがあるはずよ」
優しく目を細めると、コワレモノを触るように子犬を撫でた。



