やっと、棗がこっちを向いた。 口元がほころぶのを感じながら、キュッと棗の服を掴む。 「棗の見る景色に、私、映ってる?」 ちっちゃな声で、今にも蝉に負けそうなくらいの声で、私は呟く。 そんな私の頭に手を置いて、棗は言った。 「映ってるよ、空の下で走ってる亜子のこと、いつも見てたんだから」 力強い、はっきりした透き通った声で、断言した。 「亜子――――!!棗――――!!電車行っちゃうよ――――!?」 へへっと笑った私の耳に、友達の叫び声が入る。